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工房全景

 幹線道路から僅かばかり入った所に、3×5間の狐崎ゆうこさんの工房が建つ。訪ねた季節は桜満開の南信州。残雪残る中央アルプスの山麓を背景に、素晴らしいロケーションで創作活動を続けている。
伊那技術専門校を卒業後、恩師の工房を間借りし、すぐに独立したそうだが、訳ありやがてそこを離れることになる。縁のある伊那谷界隈で工房を開設できる場所を探し、あちこちの村役場に照会して歩いたそうで、運よく飯島町役場に紹介されたこの地に来て2年が過ぎたそうだ。
とりたてて看板は出ていないので、注文などの場合は電話連絡をしてからの方が無難である。

工房内部

 京都市生まれの彼女は小学校から高校まで秋田で過ごし、奈良の大学に進んだ後、京都で高校教師をしていたそうだ。向き不向きはあるだろうが高校教師の職を捨ててまでも・・・・、と思うのは私だけであろうか。

 「最初から不向きだった」という教師の職を捨て、飛びん込んだ木工の世界。「技術専門校を卒業後すぐに現場の世界に入れてラッキーだった」と。

 工房には横切り盤、手押し鉋、自動鉋、バンドソー、ベルトサンダー、昇降盤、角のみ盤など一通り揃っている。「ラッキーだった」と言う言葉と裏腹に、女手一つでここまで立ち上げるには強い志と信念がなければ無理な事で、気丈な人柄が窺える。

機械

 工房片隅に見慣れない外国製の機械が置いてある。現在は糸のこが付いているのだが、よく見ると色々な使い方のできる機械の様で、ベルトサンダーになったり、轆轤になったり、横切り盤になったりと十徳ナイフみたいな万能機のようだが、彼女も詳しい使い方は知らないらしい。(-_-)zzz

 

 作業台におかれた手道具は女性ならではか、比較的小さなものが多い。「手が小さいので大きな鉋は不安定になるんです」と。もちろん適材適所使い分ける大きな鉋も整然と置かれていた。

手道具
狐崎ゆうこ

 余談ではあるが、日本三大美人とは秋田美人、京美人、博多美人をさすらしい。京都生まれの秋田育ち、顔立ちの良さは産地によるものだろうか?
工房前での撮影、スッピンで笑う彼女に「産地がいいね〜〜」と冗談でも言ったなら「当たり前っしょ!」とでも返ってくるであろうか?それともノミの一本でも飛んでくるであろうか???

 飾り気のない彼女の笑顔が伊那谷の空に溶けた。

作り手に聞く39の質問
01,会社名、工房名を教えて下さい。
 工房名はありません
02,代表者のお名前を教えて下さい。
 狐崎ゆうこ
03,代表者の出身地はどこですか?
 秋田県
04,何でこの道に入りましたか?
 前の仕事をやめる理由がほしかったから。
05,今の地に工房を構えた理由は?
 技専を卒業したときに、伊那谷に工房を貸してくれる人がいたので。ずっとここでやってきて、仕事上のつながりもできて、離れられなくなりました。
06,木工の履歴を教えて下さい。
 平成5年伊那技専を卒業し、独立。
07,差し支えなければ木工に携わる以前の職歴を教えて下さい。
 京都の公立高校で講師を3年間やっていました。
08,差し支えなければ最終学歴を教えて下さい。
 奈良女子大学卒業。
09,どこかの団体に所属していますか?
 特にありません。
10,コンペなどの入選暦を教えて下さい。
 全くありません。
11,よく使う樹種を教えて下さい。
 クルミ
12,なんでその樹種を使いますか?
 木目の感じが好きだから。特に深い理由はありません。ただ、ひとつの樹種を徹底的に使ってみたいと思っていました。
13,得意とする作品は何ですか?
 「得意」というより、特にこだわってしまうものなら椅子です。
14,木材以外で使用する素材はありますか?
 椅子の座面に籐やいぐさを使用します。
15,よく使う電動工具はどれですか?
 ドリル、ルーター、トリマー、サンダー、どれも同じくらい使います。
16,よく使う手道具はどれですか?
 特に使用する道具にかたよりはありません。
17,持っている資格を教えて下さい。
 ありません
18,これから身に付けたい技術はありますか?
 籐やいぐさの編みはもっとうまくなりたいです。曲げ木ももっと勉強を続けていこうと思っています。
19,貴方の作品はどこで購入できますか?
 決まったお店はありません。クラフトフェアやデパートの催事に時々参加しています。 
できるだけ実物を見てから購入してほしいです。もし決まったものがあるなら、直接連絡してください。
20,家具以外での副収入、仕事があれば教えて下さい。
 木工以外ではありません。
21,製図は手描きですか、CADですか?
 手描き。
22,導入したい機械、工具、設備、技術等はありますか?
 旋盤。
23,肩書きはなんと呼ばれるのが似合っていますか?
 「肩書き」とは職業名のことですか? それなら「木工屋」です。
24,他人には負けないと思う技術があれば教えて下さい。
 特にありません。
25仕事は何時から何時までですか?休みは?
 9時半から20時以降まで。日曜休み。
26,この仕事をしてて嬉しかった事をお聞かせ下さい。
 自分で仕事のやり方を決められること。
27,この仕事をしてて辛かった事をお聞かせ下さい。
 特にありません。前の仕事のほうがきつかったので。
28,今までに仕事上の大きな怪我はありますか?
 大きくはありませんが、指をちょっと。
29,自分で作った物を使っていますか。それは何ですか?
 座椅子、本棚。
30,身内はあなたの作る作品をどう評価していますか?
 親は気がひけるくらい大事に使ってくれますが、妹は高くて買えないといってます。
31,物づくりに関し、影響を受けた人、尊敬する人を教えて下さい。
 伊那技専で教えてくれた先生です。はじめて木工を教えてもらったので、影響は大きいと思います。
32,あなた自身のお気に入りの作品があれば教えてください。いくつでもかまいません。
 すべて思いいれがあります。商品として割り切って作る姿勢が足りないもので。
33,子供には後を継がせたいですか、もしくは継いでいますか?
 特に継がせたいとは思いません。
34,趣味は何ですか?
 読書。ミステリーが好きです。
35,好きな食べ物は何ですか?
 食べ物じゃないけどコーヒー。必ず一日に一回以上飲んでます。豆ももう十年以上同じお店で買ってます。
36,年収一千万の公務委員と今の仕事が選べます。どちらを選びますか?
 仕事の内容によるかも。
37,今の仕事を続けると人間国宝です。ですが、それを破棄すると当選宝くじ3億円ゲットです。どちらを選びますか?
 人間国宝になってみたいです。
38,この仕事を選んで幸せですか?
 はい。
39,ご苦労さまでした。最後に、あなたの夢をお聞かせて下さい。
 一生木工を続けること。
工房探訪人 古川喜啓 2008年4月13日(日)

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