手作り家具の製作と販売

■樵と観音様のお話その壱 不条理■

世の中には不条理があります。
どれだけの不条理があるのでしょうか?

後輩の娘(こ)が「兄ちゃん死んじゃった」と店に来ました。
後輩の娘と言っても私より一級下だけなので五十四歳のおばさんです。

最初「兄ちゃんが・・・」と言っていたので、
「え!若くして逝っちゃったんだ?何歳だった?」と聞くと二十六歳と言うのです?????? 兄ちゃんが二十六???

よくよく聞くと、二人いる息子の兄ちゃんが亡くなってしまったと言うのです。
絶句です、「え〜〜っ」としか言えません。

彼女は、若くして亡くなった息子の為に、お仏壇の相談に来たのです。
息子さんの職業は木こりです。仕事中、倒木が頭を直撃し、即死だったそうです。
可哀想で可哀想で、なおさら言葉になりません。

朴訥で、木が大好きな息子の為に、木の香溢れるお仏壇をお願いしたいとの事でした。

一通りのお話を聞いた後、帰り際に彼女は「もう一つ相談なんだけど・・・」と、新聞紙の包みの中から切り株を出してきました。
それは死ぬ直前、生前最後の仕事、その切り株でした。

彼女は何らかの形にしたいとの心を残して帰りました。

今まで、何基ものお仏壇を作ってきましたが、今回のご依頼は大変ヘヴィです。

2016/5/1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく